先日、すいっちさん(@switchBeater)のプレイスタイルや普段されてる音楽をもとにサウンドイメージしてカホンを作りましたというお話。
川本楽器工房様に作って頂いた特注忍カホンが届きました!!✨
完全レコーディング仕様です!とても多機能で音が分厚くタイト!
ブーストモードにするとキックリリースが伸びて最高です!
Helios+tropeの次回カバーからどんどん使っていきます!お楽しみに♪⸜(๑⃙⃘'ᗜ'๑⃙⃘)⸝#忍カホン pic.twitter.com/p7tTU4Xhv1— すいっち🦊 (@switchBeater) May 29, 2020
サウンドイメージは言葉では伝わりにくいので、好きなアーティストの演奏動画や簡単なヒアリング(雑談)をさせて頂きました。
すいっちさんの好きなドラマーの演奏の好きな部分
他には本人の演奏や
マットなスネアでサウンドチェック♪ pic.twitter.com/UCOtDJBcyT
— すいっち🦊 (@switchBeater) May 10, 2020
最近活動されてるHelios+tropeも参考にしました。
意見をすり合わせて決めた方向性を言語化
- サウンドホールから出る音を重視する
- 低域をタイトに
- 高域はクリスピーでリムを叩いた様なカンというイメージ
普段カホンのチューニングは
演奏者に聞こえる音 :3
前から聞く音 :3
サウンドホールの出音 :4
くらいのバランスで音を作りますが、今回は宅録がメインの用途という事もありサウンドホールの音だけで音作りしました。
生の叩いた時の体感や前から聞こえる音は、いつもの半分くらいの鳴りだと思いますが、代わりにサウンドホールから録音した時のサウンドはほぼ狙い通り音になったと思います。
低域をタイトに
する為に
- 打面の下部エリアのみ響きを殺す
- 弦を打面押し当て気味にする
- 打面のビス上部にあるビスの間隔をあけ空気を逃がす
今回のカホンの打面の材質は、クイラ(表)+ヒノキ(芯材)+ウォルナット(裏)の組み合わせで作りました。
打面を作る段階ではこの地点であまり深く考えていません。
漠然とした材質に対する音のイメージはありますけど、結局、厚みや塗料・弦の当て方で音は自由に作れるのでここら辺はフィーリングです。
本来、木の割れ止めに使う塗料を打面の下部エリアにのみ使用しました。
以下、塗料説明文より抜粋
なぜノンクラックは割れが止まるのですか?
木は鉄分を持っています。ノンクラックのPEGという成分が鉄分に反応して木の導管でジェル状に固まります。
これにより急激な乾燥が止まり、徐々に乾燥するよう作用します。
悪く言うと音がこもる。
でも逆に考えると高域がばっさりカットされる事で低域が出るようになるという捉え方もできるな…と。
この性質を利用して打面裏側の下半分だけ木の導管内部をジェル化させました。
こうすることで、高域の成分を残しながらタイト気味の低音サウンドな打面になりました。
弦の下部を打面に押し当て気味にしてタイトな低音を作る
上の写真の様に弦の押し当てるのに新しい手法を試してみました。
普段、全体の弦のあたり方をゴムバンドで調整する事が多いんですが今回は打面をジェル化した影響か、ゴムバンドだけで抑えると板の音を止めすぎてしまうというか、イメージよりもタイトすぎる感じがしました。
(100時間くらい)試行錯誤した結果。
ゴムバンド+メラミンスポンジがいい感じでした。
打面をちょうど良い張力で、抑えたいところを部分的に抑える。
・スポンジの位置によって音が変わる
・自分で動かせるし、外したりもできる
・悪くなったら簡単に手に入るので替えがき
高域はクリスピーでリムを叩いた様な音に
する為に
- 打面上部にリムっぽい音を作る
打面上部にちょっとだけ区切られたエリアがあります。
ここをうまく叩くとリムっぽい音がなります。
このエリアをミュートエリアと称して設置してます。
メリット
- 弦の鳴らないエリアがあり表現の幅が広がる
- 一緒に叩くと木のカンとした音が出る
- スラップ奏法時にヒットする場所が角にくる
デメリット
- 低音のスイートスポットの打点が2cmほど下へ下がる
- 板の隙間から抜けてくる音が少し減る(奏者の体感が少し減る)
試作段階のサイド音が鳴るやつ
すいっちさんは、ベースがドラマーで左から右へ音程が下がってる方がイメージどおりの音が出せるかな?といつも作ってる音程とは左右反対にしました。
あと、名称はサイドボンゴじゃオリジナリティに欠けるという事で「Trick Wood」
名付け親はLosstime Lifeの龍崎一さん(@ryuzakihajime)
仕掛けがある木って事みたいで結構気に入ってます。
この時点で音は結構仕上がっていて、こんな感じでした。
奏者に聞こえる音はすごい気持ち良くて、いつもならこれでOKかな?ってなるくらい良い出来でした。
【※爆音注意※】
最近よくやる音の立ち上がりとヌケの確認テスト。
製材機の起動中は全音域えらい事になってるので、その中で音がヌケて、カホンの音圧を感じられれば成功という無駄に高いハードルを自分に課しました。 pic.twitter.com/QzIF4jtACk
— 川本楽器工房@カホン研究所 (@kawamotogakki) May 20, 2020
ただ、カホン用のレコーディングルームで録音をしながら検証していると、微妙な弦のノイズだったり低音のサスティーン感だったりが少しイメージと違う判断したので、勇気がいりましたがここから大改造しました。
改造した点
- 弦の貼り方を変更
- スナッピーの取り付け
- 内部の反響を狙ってアルミを設置
弦はまっすぐ張っていたんですが「ハ」の字に変更。
これは弦の役割をバズ感ではなく低音を担当させる為と、丈夫にスペースを確保してスナッピーを設置する為です。
スナッピーはパールとか色々試したんですが、構造的にスナッピーを端に設置するしかなかったので、テンションの高いよりテンションの低いスナッピーの相性が良かったです。
途中、もともとお持ちだったカホンの名前が出てきます。
このサウンド一部を再現という言葉を使ってますが誤った表現です。
すいっちさんが前の曲で使ってたカホンの「高域を叩いた時に出る内部反響の仕方」が良かったのでその音の成分は残したいと思いチャレンジさせてもらいました。
その為に、この動画では既に加工済みですが内部天板の角にL型のアルミを入れています。
普段はココに△の木を入れて逆に角をなくしてるんですが、今回はあえてその反響感を取り入れました。
その他のこだわり
スプリングインシュレーター
これは、言われないと気づかないと思いますがカホンに乗って前に体重をかけると僅かにゆらゆら揺れて気持ちいです。
お尻や関節にくるダメージも少し減らしてるはずです(適当)。
サウンド的にはこういう狙いを持ってやってるんですが、ほんと僅かな違いです。
体感としては響きが若干良くなるのと、ピッチが全体的に少し上がる気がします。
「気のせいかな?ほどの小さな積み重ねが最後に大きな違いとなる」という父の教えをいつも思い出します。
わずかでも良くなるなら面倒でも「よし、やろう」って。
あと、アナログブースト機能も取り入れました。
ブーストOFF
ブーストON
かなり、違いがありますよね。
これ電気なしのアナログで切り替えれるのって面白くないですか?
あと、シェラックニス。
こいつは…エモーショナル。エモい。
高級家具やヴァイオリンなんかに使われてる有機塗料で木目が中で輝く感じがします。
本当は色々理由はあるんですが、深いとこまで書きだしたら小説みたいな文章量になっちゃいそうなのでココらへんにします。
今回、普段発信してない情報だったり、新しい取り組みを中心に書いてみました。
その人の為だけに、サウンドをイメージして提案しながら作りあげるのはおもしろい!
世界で一つのカホンになったと思います。
※加工法や結果については、全て体験に基づくものでどのカホンでも同じ結果が得られるとは限りません。
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